2023年9月に読んでおもしろかった本📗

先月読んでおもしろかった本について、ネタバレにならない程度にざっくりご紹介します!

母という呪縛、娘という牢獄

毒親を持つ子どもの凄惨な人生が辛すぎる1冊

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「娘(あかり)が母親を殺害し、その遺体をバラバラにして遺棄」。2018年3月、滋賀県で起きた実際の事件です。
女性記者の著者が、獄中のあかりに直接取材を重ねた結果、浮かび上がってきた母娘の関係性は深く考えさせられる内容となっています。

国立大学の医学部進学を母に強要され、9年間もの間、浪人生活を続けた娘・あかり。
テストの点数が低ければ鉄パイプで殴られる。
19歳の時、ある企業から内定を受けるも、母が勝手にそれを辞退する。
持っていた携帯は、母親に発見され、庭で破壊される。
母から受けた悪質な「躾」は挙げるとキリがありません。 似た経験を持たれている方は、精神的に結構危険なレベルかもです。

この本には、裁判での証拠として提出された、母と娘のLINEのやり取りが多数紹介されているのですが、それが本当に生々しいです。
母が娘の努力、才能、容姿、そして思想を全否定し、自らを裏切られた被害者として振る舞うやりとりには、あかりへの同情も生まれます。(実際に懲役15年の1審判決から2審では10年に減刑されています)

この事件自体を知らなかった私ですが、毒親とその子供との共依存の関係に興味を抱き、この本を手に取りました。
親子関係に実際に悩んでいる方には、正直刺激が強すぎると思いますが、ぜひ読んでもらいたい本です。

偉大な組織の最小抵抗経路 リーダーのための組織デザイン法則

エネルギーは最も楽な方に向かう。組織もそうだ!

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組織論、とりわけ組織の改革に関して「構造」というキーワードをもとに論じた書籍です。 本書の大前提は、人も組織も、社会や経済システムも、ほとんど何もかもが「構造」によって支配されている、ということにあります。
「構造」とは、「全体として完成した一つの実体」のことを指します。
個々のパーツがひとまとまりになり、総合的な関係性のシステムとなって初めてまともな「構造」が作られます。
例えば、現代の自動車を様々なパーツをもって自動車という一つの実体を形作ります。
しかし、自動車を空に飛ばすことはできません。それは構造的に飛行が不可能だからです。

つまり、会社組織も様々な部署や人、ステークホルダーが関連して組織(という実体)となります。そしてそれを支えるのは「構造」です。
もしその「構造」が変革の目的を達成できる要件を満たしていなければ、どれだけ優れた施策・制度を実施しても意味がありません。(まさに空飛ぶ自動車のように)

「構造」という観点に立つ時、重要な発想が「最小抵抗経路」。 「最小抵抗経路」とはつまり、最も楽な方向・方法ということで、組織も「構造的」に「最も楽な方にしか進まない」というのが本書のキーです。
本書では、組織変革が失敗に至る理由は、その組織にとっての「最小抵抗経路」が変革を支えていないことだと主張しています。

本書は、「構造」という観点から語る組織論ですが、内容的にはそれほど奇抜な印象ではありません。
ゴールと現状の差を、適切な目標を立てて埋めていくといった、割と当たり前な手法なども多く語られます。 ただ、耳障りのよい施策ばっかりしても、基盤がグラグラだから意味なくないか?というのは、何においてもよくあることだと思うので、一歩俯瞰して物事を考えるきっかけとして良い内容でした。

大学4年間の西洋美術史が10時間でざっと学べる

絵画を見るときはこうやって見るのだ👀

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大学で、少し西洋美術史について学んでいたのですが、改めて学びたくなったので読んでみました。
本書は、図版が多く登場するというよりは、絵画の見方(概ね「なぜこの絵が描かれたのか?」を考える方法論)を中心に教えてくれる内容です。

例えば、ルネサンス時代のフィレンツェなどでは、『旧約聖書』の外典『トビト書』の逸話をテーマとした「金貸しの息子が天使に守られながら旅をする」という主題の絵が多く描かれました。
この地域では、当時金融業が非常に盛んでしたが、当時の金融業はお金を物理的に運ぶ危険がつきものな仕事であったため、お守り代わりにこのような絵が多く描かれたと言われています。

「なぜこの作品が生まれたのか」を考えることは、関連する人物や土地、時代背景など、歴史を複合的に見ることになるため、歴史っておもしろい!と思える瞬間の一つです。
本書は、西洋美術史の入門書として、その体験ができる良い1冊だったと思います!

オブジェクト指向設計実践ガイド ~Rubyでわかる 進化しつづける柔軟なアプリケーションの育て方

オブジェクト指向Rubyで学べる1冊

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Rubyの学習をしていたのですが、クラスを用いた設計方法のベストプラクティスがイマイチよくわからず、本書を読みました。
中盤以降は、初心者の自分にとっては難しく、また読み直しが必要かなと思っていますが、基本的なオブジェクト指向の考え方を理解することができたと思います。

教科書的ではなく、少しポエミーなところもあるので、読解が難しいところはあります。

前半部分だけでも、クラスを用いた設計の考え方が頭の中で明確になるので、Ruby初心者の方にもお勧めできると思います。